自動車部品メーカーが多い都道府県ランキング

自動車産業には、「自動車メーカー」「自動車部品メーカー」「材料メーカー」など、さまざまな業種の企業があります。本記事ではそれぞれの企業の違いや、関わりがどのようになっているのかを、順序立てて解説します。

記事後半では自動車部品メーカーが多い都道府県ランキングを発表し、上位3位までの都道府県の特徴を紹介したり、自動車部品メーカーが多い理由を読み解いたりします。自動車産業の大まかな流れや地域ごとの特色、日本全体を俯瞰したときの分布図などを知ることで、日本の自動車業界についての理解が深まるでしょう。

自動車部品メーカーとは

自動車部品メーカーとは、エンジンやカーエアコンなどの自動車を作るための部品を作っているメーカーです。自動車部品メーカーが作った部品は、「自動車メーカー」が購入し、組み立てることで自動車になります。

自動車部品メーカーについて理解するなら、自動車がどのように作られているのか、産業全体の流れを把握するとわかりやすいでしょう。自動車製造に関わる「3つのメーカー」について解説します。

自動車メーカー

自動車メーカーは、自動車部品メーカーから購入したパーツを組み立て、自動車を完成させる企業です。「トヨタ」や「日産」などが有名でしょう。

なお、メーカーが作った自動車を販売するのは「ディーラー」です。自動車メーカーは自社に小売部門を持たず、正規販売店であるディーラー、ディーラーから車を仕入れて販売するサブディーラーが販売を担っています。

自動車部品メーカー（1次サプライヤー）

自動車部品メーカーは、自動車メーカーと直接取引をしている部品の開発・製造会社です。1次サプライヤー（サプライヤーは、製造業者や納品業者の意味）と呼ばれることもあります。扱う部品は多岐にわたり、次のようなものがあります。

【自動車部品メーカーが製造・開発するもの】
エンジン：日立Ａｓｔｅｍｏ株式会社、トヨタ自動車九州株式会社　など
ブレーキ：株式会社厚みテック、中村技研株式会社　など
カーエアコン：株式会社豊田自動織機、株式会社デンソー九州　など

自動車部品メーカーの中には調達部門があり、次に紹介する「材料メーカー」から部品の材料を仕入れています。部品の製造では、主に正社員が生産管理を行い、期間工や派遣工が実際の作業をしています（正社員が担当する工程もあります）。

材料メーカー（2次サプライヤー）

材料メーカーは、自動車部品メーカーに「部品の材料」「部品の部品」を提供する企業です。2次サプライヤーと呼ばれることもあります。自動車部品以外の素材・部品を作っている企業や、自動車メーカーと直接取引している企業もあります。次のような企業が有名です。

【材料メーカーが製造・開発するもの】
三菱ケミカル株式会社：汎用樹脂、エンジニアリングプラスチック　など
日本製鉄株式会社：金属素材全般
AGC株式会社：ガラス、セラミックス　など

自動車部品メーカー業界動向

自動車部品メーカーの市場規模は、2011年からほぼ横ばいの状態が続いています。ただ、2019年、2020年と2年連続での規模縮小があり、特に2020年の下がり幅は2011年以降、最大のものでした。


出典：自動車部品業界の動向・ランキング等を研究-業界動向サーチ

このグラフは、自動車部品の生産金額の推移を表したものです。生産金額の上昇や下降が続くことはあまりなく、上下を繰り返してきたことがわかるでしょう。


出典：自動車部品業界の動向・ランキング等を研究-業界動向サーチ

この図は自動車部品メーカーのシェア率を表したものです。1位のデンソーは横ばい、日立製作所や矢崎総業は上昇していますが、全体的に減少傾向にあるメーカーが多いです。

自動車部品メーカーは、自動車需要の増減に大きく影響されます。2020年はコロナ不況もありましたが、カーシェアリングの普及や自動車に興味のない人の増加などの影響もあるでしょう。

自動車部品メーカー都道府県ランキング

1位．愛知県：46社
2位．静岡県：14社
3位．埼玉県：8社

4位．神奈川県：7社
4位．広島県：7社
4位．福岡県：7社
5位．長野県：6社
6位．三重県：5社
7位．岐阜県：4社
7位．大阪府：4社
8位．福島県：3社
8位．栃木県：3社
8位．東京都：3社
8位．兵庫県：3社
9位．山形県：2社
9位．群馬県：2社
9位．茨城県：2社
9位．富山県：2社
9位．滋賀県：2社
9位．奈良県：2社
9位．岡山県：2社
9位．熊本県：2社
9位．大分県：2社
10位．岩手県：1社
10位．宮城県：1社
10位．新潟県：1社
10位．石川県：1社
10位．福井県：1社
11位．北海道：0社
11位．青森県：0社
11位．秋田県：0社
11位．千葉県：0社
11位．山梨県：0社
11位．京都府：0社
11位．和歌山県：0社
11位．鳥取県：0社
11位．島根県：0社
11位．佐賀県：0社
11位．長崎県：0社
11位．山口県：0社
11位．徳島県：0社
11位．香川県：0社
11位．愛媛県：0社
11位．高知県：0社
11位．宮崎県：0社
11位．鹿児島県：0社
11位．沖縄県：0社

1位．愛知県（46社）

自動車部品メーカーが多い都道府県ランキング1位は、46社のある愛知県でした。2位と3倍以上の差をつけた、圧倒的な社数です。

ほかの都道府県と比べた圧倒的な部品メーカー数は、自動車メーカーが愛知県に集中していることによるものでしょう。例えば世界有数の自動車メーカーであるトヨタ自動車や、自動車部品メーカーでトップシェアを誇るデンソーなど、愛知県には自動車関係の企業が多くあります。

2位．静岡県（14社）

自動車部品メーカーが多い都道府県ランキング2位は、14社のある静岡県でした。自動車部品メーカーの数が2桁なのは、1位の愛知県と2位の静岡県の2エリアだけです。

静岡県は自動車部品に限らず、製造業が盛んな県として知られています。特に飲料や木材、紙製品などの出荷額は全国1位、楽器や輸送用機械ではトップクラスのシェアです。

そんな静岡県が自動車部品メーカーランキング2位なのは、納得の結果でしょう。1位の愛知県と隣接している立地も、大きな要因といえそうです。

3位．埼玉県（8社）

自動車部品メーカーが多い都道府県ランキング3位は、8社のある埼玉県でした。

自動車部品に限らず、埼玉県は自動車や飛行機などの乗り物の製造が盛んな地域として知られています。県も企業誘致に積極的で、「輸送用機械危惧製造業（乗り物を製造する事業）」に対して、「一定の条件を満たす工場等を立地した企業」を「立地企業」として認めています（参考：埼玉県公式HP）。

ちなみに、埼玉県と比べられることの多い千葉県は、自動車部品メーカー数が0という意外な結果でした。

読み取れること

この地図は、自動車部品メーカーが4社以上ある都道府県を色分けしたものです。広島県と福岡県を除き、1位の愛知県を中心にランキング上位の都道府県が集中していることがわかります。自動車や部品などの「物質」を扱う産業では、輸送のしやすさから各企業がある程度固まって分布しているといえるでしょう。

1位の愛知県が他都道府県と圧倒的な差をつけていることにも注目すべきです。愛知県は間違いなく、日本の自動車産業の中心地域であり、愛知県内だけで産業がある程度完結しているとすらいえます。

その最大の理由は、愛知県に「トヨタ」があることでしょう。愛知県には自動車メーカーの「トヨタ」と、トヨタグループの源流にあたる自動車・自動車部品メーカーの「豊田自動織機」があります。世界有数の自動車企業がある愛知県に、部品メーカーが集中するのは当然でしょう。

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